早産とは
早産とは正期産より前の出産のことであり、正期産とは妊娠37週0日から妊娠41週6日までの出産のことをいいます。日本では妊娠22週0日から妊娠36週6日までの出産を早産と呼びます。妊娠22週未満の出産は流産といい、早産とは区別されます。国による医療技術の違いにより、妊娠24週以降や、妊娠28週以降に出産しなければ、早産として扱わない国も多くあります。
妊娠22週で生まれた場合、早産となりますが赤ちゃんの体重は500g前後で長期間の新生児医療(新生児集中治療室での治療)が必要となり、また、早く生まれた赤ちゃんほど、後で重篤な障害が出現する可能性が高くなります。
最近では、妊娠34週以降の正期産に近い時期の早産であっても、呼吸障害など長期に障害を残すことが報告されています。ですから、早産にならないように妊娠中、定期的な健診を受けていただき、早産になりやすい状況の早期診断(下記の切迫早産)と予防が必要になります。ちなみに早産は全妊娠の約5%に発生し、その原因は感染や体質によることが多いといわれています。
また、妊娠高血圧症候群、前置胎盤(胎盤が子宮の出口をふさいでいる状態)、常位胎盤早期剥離(出産の前に胎盤が子宮の壁からはがれてしまうこと)、胎児機能不全(赤ちゃんの元気がなくなってくる状態)などでは子宮内では赤ちゃんが生きられない状態になり、人工的に早産とせざるを得ない場合もあります。
切迫早産とは
切迫早産とは早産となる危険性が高いと考えられる状態、つまり早産の一歩手前の状態のことをいいます。子宮収縮(お腹のはりや痛み)が規則的かつ頻回におこり、子宮の出口(子宮口)が開き、赤ちゃんが出てきそうな状態のことです。破水が先に起きたり、同時に起きたりすることもあります。破水とは、子宮内で羊水とともに胎児を包んでいる膜が破れて、羊水が流出している状態のことをいいます。羊水が出続ければ陣痛が起きたり、細菌に感染したり、羊水の量が減ることで赤ちゃんが圧迫されたりといったことが問題になります。
切迫早産の治療では、子宮口が開かないようにするために、子宮収縮を抑える目的で子宮収縮抑制薬(はりどめ)を使用することがあります。また、切迫早産の原因の一つでもある細菌による感染が疑われれば抗菌薬を使用することもあります。子宮収縮の程度が軽く、子宮口があまり開いていない場合は外来通院による治療でもいいのですが、子宮収縮が強く認められ、子宮口の開大が進んでいる状態では、入院して子宮収縮抑制薬の点滴治療を考慮します。生まれた後の赤ちゃんの状態をよくするために、ステロイドという薬をお母さんの体に使うことがあります。
妊娠34週より前に破水した場合は、赤ちゃんが自分で呼吸できる状態になるまで抗菌薬を投与し感染を抑えることが一般的です。妊娠34週以降であれば、赤ちゃんは自分で呼吸できる可能性が高いので、赤ちゃんに細菌が感染する前に出産し、生まれた後に治療室での治療を行います。
また、症状がなく子宮口が開きやすい状態を子宮頸管無力症といいます。どんどん子宮口が開き、流産や早産になるので状況により頸管(子宮の出口)をしばることがあります。これを子宮頸管縫縮術といいます。
早産のなりやすさとは
これまでの妊娠で早産になったことのある方はより早産になりやすいとされています。また、子宮頸部(子宮の出口)の病気(子宮頸癌や異形成という病気)のために円錐切除術という子宮頸部を切り取る手術を受けた方、多胎(双子や三つ子など)や細菌性腟症(腟内の感染の一つ)の方もまた早産になりやすいといわれています。妊娠中の検査として、超音波検査で子宮の出口が短くなっている方は早産になりやすいといわれているため注意が必要です。
ならないようにするにはどうしたらよいか?
切迫早産や早産の予防のためには、日頃から無理のない妊娠生活を心がけることが最も大切です。そして、かかりつけの先生の妊婦健診をきちんと受診し、その指導には必ず従うようにしましょう。